キダチチョウセンアサガオ (ナス科キダチチョウセンアサガオ属)
①分布等:各地で植栽。中南米原産の常緑低木。幹は、しばしば多数に分岐し、高さ3~5mになる。樹皮は淡灰褐色で円い皮目が多数ある。キダチチョウセンアサガオ属の栽培品種は、ドイツ、アメリカ、デンマークなどで多数作出されており、1000種以上あるといわれ、本種の種名は、キダチチョウセンアサガオ属の栽培品種の総称としても使われている。
②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯あり-きょ歯は単きょ歯-側脈は葉縁に達する-常緑性(図27)
③葉はらせん状に互生する。葉身は、長さ 10~20cm、幅 4~8cmの楕円形。葉柄は2~8cm。先端は急に鋭く尖り、基部は不揃いな円形。葉縁は歯牙状の大きなきょ歯が上半部にあるか、稀に全縁。側脈は7~10対で枝分かれしないできょ歯に入る。葉脈は細脈まで表面で凹み裏面に隆起する。
④質は草質で柔らかく、表面は深緑色、裏面は灰緑色で、両面にビロード状の軟毛がある。若い枝は緑色で柔らかく草の茎状、短毛が生える。
⑤花期は4~9月。上部の葉腋から長さ20~25cm、幅約13cmのトランペット状の大きな花を1個づつ下垂する。花冠の先端は5裂して反転し、裂片の先は角状に伸びて尖る。萼は長さ7~9cmの角ばった筒状で、先端は浅く不揃いに5裂し、裂片の先は尖る。花の色は、白色、淡黄色、淡紫色などがある。花には心地よい香りがあり、夕方に最もよく匂う。果実は蒴果。長さ10~15cmの稜のある筒状で、緑色から淡茶色に熟す。
⑥類似種:同属の<コダチチョウセンアサガオ>は、葉や花が本種と酷似しているが、萼は筒状であるが角ばらず、先端は5裂せず斜めに裂けるかのみか、深く2~3裂するのみである点で区別できる。
キダチョウセンアサガオとコダチチョウセンアサガオは、漢字ではどちらも「木立朝鮮朝顔」、英名ではどちらも「angel's-trumpet」と記すので紛らわしい。
⑦名前の由来:「木立朝鮮朝顔」の意で、「木立」は木のようになっていること、「朝鮮」は江戸時代に薬用として朝鮮半島経由で渡来したこと、「朝顔」は花がアサガオに似ていることにちなむ。別名の「オオバナチョウセンアサガオ」は、花がチョウセンアサガオに似ていて大きいこと、「エンジェルストランペット」は、大きくて下垂するトランペット形の花に由来し、英名の「angel's-trumpet」をそのまま用いた。
⑧葉や果実などにスコポラミン、ヒヨスチアミンなどの有毒性のアルカロイドを含んでおり、注意を要する。食べると、せん妄、幻聴、頭痛、めまい、興奮、錯乱などを引き起こし、皮膚に汁液が着くと炎症を起こし、目に液汁が入ると瞳孔が散大し、失明する場合もあるようだ。
本種は、旧分類では「チョウセンアサガオ属」とされていた。
葉表 葉裏
葉表拡大 葉表拡大2
葉裏拡大
若い実
近影 全影
コダチチョウセナサガオの花
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