①分布等:本州(福島県から和歌山県の太平洋側)、伊豆諸島 の沿海部の山地・丘陵に自生する落葉小高木。雌雄同株。日本固有種。高さ5~10mになる。樹皮は灰黒褐色で、無毛、縦に浅く裂ける。 ②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯あり-きょ歯は重きょ歯-側脈は葉縁に達する(図25)。 ③葉は互生し、葉身の長さ 6~12cm、幅 3~6cmのやや三角状の長卵形。葉柄は1~2cm。葉先は鋭く尖り、基部は円形で左右不揃い。葉縁には先端が腺に終わる鋭い重きょ歯がある。側脈は12~16対で直線的に並行して伸びて葉縁に達する。葉脈は表面で凹み裏面に隆起する。 ④葉の表面は鮮緑色で光沢があり、裏面は淡緑色で全体に粘液を分泌する腺点があリ粘る。若葉時にはわずかに毛があるが、成葉では両面ともほぼ無毛。秋には緑のまま落葉する。枝はやや太くて灰褐色または黄褐色で円形の皮目が多い。 ⑤花期は3~4月。雌雄同株。葉の展開と同時に開花する。雄花序は褐黄色、長さ4~5cm、直径1.1cmの円柱状で弓形に曲がり、前年枝の葉腋から下垂する。雌花序は、雄花序のより上位につき直立する。果実は堅果の集合した果穂。果穂は長さ2~3cmで、直立または斜上してつき、10~11月に暗褐色に熟す。 ⑥類似種:ヤシャブシ類には、「オオバヤシャブシ」、「ヤシャブシ」、「ヒメヤシャブシ」の3種があり、どれも直線的な葉脈が特徴でよく似ているが、見分け方は、果実の数や冬芽のつき方が重要。本種は果穂が1個づつつき大きい、ヤシャブシは1~3個、ヒメヤシャブシは3~6個つくことで区別する。詳細は「類似種の見分け方」参照。シデ類にも似るが、葉が三角形に近い点で異なる。 ⑦名前の由来:大きいヤシャブシの意で、不気味な松かさ状の果実を「夜叉」に譬えた命名。 ⑧ヤシャブシ類は根に根瘤菌が共生しており、空気中の窒素を養分として取り込む能力があるので、やせ地でもよく育つ。このため、法面緑化や砂防用として各地で植栽されている。 |
葉表 | 葉裏 | |
葉表拡大 | 葉裏拡大 | |
葉芽(左)と展開前の雌花序(中)・雄花序(右) | 雄花序(左)と雌花序(上向き右) | |
若い果穂 | 裂開した果穂 | |
近影 | 幹 | |