ヤブニッケイ(クスノキ科クスノキ属)
①分布等:本州(宮城県以南)、四国、九州、沖縄 の山地に自生する常緑高木。高さ10~20mになる。樹皮は灰黒色で平滑。
②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯なし-下面に毛がない-側脈は明瞭-常緑性(図23)。
③葉は左右に2枚づつ互生するコクサギ型葉序であるが、互生または対生に見える枝もある。葉身は 長さ 6~12cm、幅 2~5cm の長楕円形。葉柄は 0.8~1.8cm。葉先はやや尾状に伸びて鋭く尖り、基部は楔形。3行脈が目立つ2本の側脈は基部の少し上から分岐し、葉の先端近くまでは達せず、葉の肩あたりで消える。葉縁は全縁で少し波打つ
④葉は厚い革質。表面は濃緑色で光沢があり、裏面は黄緑色または灰白色で、両面とも無毛。葉をもむとかすかにシナモンの匂いがする。若い枝は淡黄緑色で無毛、葉の付く位置で扁平になり、皮目が散生する。
⑤花期は6月。新枝の葉腋から散形花序を伸ばし、黄緑色の小さな花を5~13個つける。花被は長さ約0.25cmの筒形で先端は6裂するが、平開はしない。果実は液果。長さ約1.5cmの楕円形で、浅い杯形の果床の上につき、10~11月に黒紫色に熟す。
⑥類似種:3行脈の特徴を持つ類似種には、葉の大きさ順に、シロダモ、ニッケイ、ヤブニッケイ、クスノキがあり、次の特徴で見分ける。
*シロダモは、葉が枝先に集まってつき放射状に開き(若葉の時は垂れ下がる)、葉裏が粉を吹いたように白く、黄褐色の絹毛でおおわれる。
*ニッケイは、3行脈の2本の側脈が、主脈と並行して伸びて、葉の先端近くまで達し、葉の裏面全体に微毛があり、葉をもむとニッケイの匂いがする。
*ヤブニッケイは、3行脈の2本の側脈が主脈と並行せず角度をもって伸びて、葉の肩あたりで消え、葉の裏面は無毛、葉をもむでもニッケイの匂いはしない。また、葉が規則正しくほぼ等間隔でついている。
*クスノキは、3行脈の分かれ目にダニ部屋があり、葉は薄い革質で、ちぎると樟脳の匂いがする。詳細は「類似種の見分け方」参照。
⑦名前の由来:「ヤブ」は役にたたないことを表し、ニッケイに似ていて、ニッケイほどは役にたたないとされたことによる。
葉表 葉裏
葉表拡大 葉裏拡大
花序
近影
近影2 近影3
全影  
 
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