コウゾ(不分裂葉)(クワ科カジノキ属)
①分布等:本州(岩手県以西)、四国、九州 の山地に野生化している落葉低木。雌雄異株。ヒメコウゾとカジノキの雑種で、中国大陸から渡来し、江戸時代から和紙の原料として栽培。高さ2~5mになる。樹皮は褐色で小さな皮目がある。本種には多くの栽培品種があり、地域により「まそ」、「あかそ」、「あおそ」、「たおり」、「あさば」、「かなめ」、「まかじ」などの名前で流通し、和紙の品質もそれぞれに異なるようである。現在、野生で見られるものの多くは、これら栽培品種が野生化したものが多いようだ。本解説は栽培種「まそ」を使用している。
②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯あり-単きょ歯-側脈は葉縁に達しないか不明瞭-
            きょ歯は葉身の全体にある-落葉性(図31)。
    広葉樹(直立性)-単葉-分裂葉-互生-きょ歯あり(図12)。
③葉は互生し、葉身は 長さ 10~20cm、幅 8~18cmのゆがんだ卵形。葉縁は分裂しないか2~5裂するものまでさまざま。若い木では分裂したもの(図12)が多く、成木では、不分裂葉のものが多いようだ。葉柄は .2~7cm。先端は尾状に伸びて鋭く尖り、基部は切形または浅い心臓形で左右不同基部から3主脈が出る葉脈は葉を縁どるように伸びて葉縁の手前でつながり、葉縁にはやや不整な細かいきょ歯がある。
④質は薄く、葉の表面は濃緑色で短毛を散生してざらつき、裏面は緑色で葉脈上に短毛がある。葉柄には軟毛があり、本年枝には、はじめ短毛が密生するが、のちに少なくなる。
⑤花期は4~5月。雌雄異株。雄花序は長さ1~1.5cmの楕円形、花柄は長さ約0.5cmで、葉腋から下垂してつく。雌花序は直径約1cmの球形で葉腋に1個ずつつき、赤紫色の長い花柱が多数あり目立つ(花柱の長さは明らかにヒメコウゾより長い)。果実は集合果であるが、ほとんど結実しない。
⑥類似種:同属の「ヒメコウゾ」、「カジノキ」に似る。本種とヒメコウゾとの違いは、本種は葉の大きさ、葉柄の長さがヒメコウゾの2倍ほどもあるが、中間的な個体もしばしばあり、葉だけでは本種と区別が難しい。明確に区別できるのは、本種は雌雄異株であり、ヒメコウゾは雌雄同株である点である。また、本種はほとんど実がつかないが、ヒメコウゾは多数の実をつけるので、その点も区別点となる。ただし、本種は交雑種であるため、カジノキに近いものがあり、その株の場合は雌雄同株で、実もつけるという。本種とカジノキの違いは、カジノキは葉の両面、葉柄、若い枝に毛が密生するが、本種にはそれほどの毛がないこと。
⑦名前の由来:神に献じる布(神衣=かみそ)の材料にしことにちなむなど諸説ある。
⑧本種の樹皮は強靭な繊維を持ち、最高級の和紙を作る材料として知られており、「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)、「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の3つの「和紙」がユネスコの無形文化遺産に登録されている。和紙の原料としては、本種の他にヒメコウゾ、ミツマタ、ガンピ、カジノキなどがあるが、登録されているのは本種を原料とした和紙のみである。
⑨なお、ヒメコウゾも別名でコウゾと呼ばれており、両種を混同する混乱が見られる。これは、もともと日本に自生しているヒメコウゾをコウゾと呼んでいたため、中国から渡来したコウゾと区別するため、日本原産のコウゾをヒメコウゾと呼ぶことにしたためとされている。
本種は、旧分類では「コウゾ属」とされていた。
葉表 葉裏
葉表拡大 葉表拡大2
葉裏拡大(即脈は先端部分で繋がる) 葉裏拡大2
枝と冬芽 雄花序(蕾)
雄花序 雌花序
近影(雄株) 近影(雌株)
近影 近影2
全影
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